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私が大学を卒業したのは1986年の春。今年で耳鼻咽喉科医人生39年目となります。6月号(96巻7号)のあとがきで頭頸部領域の進歩について触れましたが,耳科・神経耳科領域においても,この40年足らずの間に実に多くの進歩がありました。人工内耳の手術が初めて日本で実施されたのが1985年。保険適応となったのは1994年。喘息患者に伴う難治性滲出性中耳炎(好酸球性中耳炎)が初めて報告されたのが1993年。診断基準が提唱されたのが2011年。auditory nerve disease(auditory neuropathy)が世界で初めて報告されたのが1996年。新生児聴覚スクリーニングが国のモデル事業として開始されたのが2001年。難聴の遺伝子診断が先進医療として承認されたのが2008年。保険収載されたのは2012年。ANCA関連血管性中耳炎の診断基準が提案されたのが2013年。急性低音障害型感音難聴の診断基準が作成されたのが2015年。日本が世界に先駆けて取り組んできた経外耳道的内視鏡手術(TEES)が保険適応となったのが2020年。いずれも私が新米の頃には,その概念すらなかった病態・診断・治療です。
本号の特集では「伝えたい レジェンドによる耳科診療の極意」と題し,これらの病態の解明や診断法・治療法の開発にリアルタイムで取り組んでこられたご当人に,難治性外耳疾患・中耳炎,TEES,耳硬化症,auditory nerve disease,急性感音難聴,人工内耳,遺伝性難聴,顔面神経麻痺,聴神経腫瘍についてご解説いただきました。さらにReview Articleでは,耳下腺癌の臨床の大家である大阪医科薬科大学名誉教授 河田 了先生に耳下腺癌のリンパ節転移をテーマにご寄稿いただいています。耳科学・頭頸部外科学のレジェンドが難治性疾患に人生をかけて挑まれた情熱を行間から読み取っていただければ幸甚です。
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