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はじめに
がん治療において,積極的な治療が困難となった場合,症状緩和を中心とした終末期医療へ移行する。厚生労働省による人口動態統計1)によると,自宅で最期を看取られる人が1951年には82.5%であったが,その割合は年々低下し,2005年には12.2%となった一方で,病院で最期を看取られる人が79.8%まで上昇した。本邦では2007年にがん対策推進基本計画2)として,在宅医療の充実を図ることが目標とされ,最期を自宅で迎えることが推奨された。その後,徐々に在宅での看取りが増えつつあるが,2020年でも15.7%と,まだ低率にとどまっている1)。一方で,2017年度の「人生の最終段階における医療に関する意識調査」3)において,“食事や呼吸が不自由であるが,痛みはなく,意識や判断力に問題がない末期がん状態の場合,どこで過ごしたいか?”という問いに対して,医療従事者か否かにかかわらず,60〜70%の人が自宅を希望した。また,そのなかで自宅にて最期を看取られたい人は約70%であった。すなわち,終末期がん患者において,在宅医療への移行率を上昇させ,自宅での看取り率を上げることが,われわれ医療者に求められている。
終末期医療への移行の際に,患者やその家族にどのように終末期であることを伝えて,どうコーディネートするかは,主治医に委ねられることが多い。がん患者では,再発しても積極的な治療中の日常生活動作(activities of daily living:ADL)は比較的保たれ,希望をもって治療を受けていることが多いが,終末期になると急激なADLの低下をきたすという特徴がある。特に頭頸部がん患者では,呼吸管理や栄養管理が直接の問題となるため,がんの進行とともに急激に病状が変化する可能性がある。しかし,終末期頭頸部がん患者に対するbest supportive care(BSC)提示後の経過についての過去の報告は少ない4,5)。また,在宅医療専門施設における頭頸部がん患者の在宅看取り率は他がん種よりも低率であり,終末期頭頸部がん患者の自宅での対応が難しいとの指摘もある6)。
そこで,入院中にBSCの方針となった頭頸部がん終末期患者の在宅医療への移行の現状を明らかにすること,さらに自宅退院ができるか否か,自宅退院後の患者が自宅で最期を迎えることができるか否かの要因について,患者の介護度に着目して検討した。
Of the 136 patients who presented or agreed to the best supportive care for terminal head and neck cancer, 51 were discharged home, 43 to a palliative ward, and 36 to a convalescent hospital;6 had in-hospital death. Only 16 of the discharged patients were at home at the time of end-of-life care. Having two caregivers for home discharge and three for final care after discharge from home is desirable. The number of caregivers must be greater for end-of-life care at home, and a public and social support system is urgently required.
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