増大号特集 患者さんの質問にどう答えますか?—言葉の意味を読み解きハートに響く返答集
説明・回答にまつわるエトセトラ
看取りで医師ができること
宮本 翔平
1
,
塩尻 俊明
1
1国保旭中央病院総合診療内科
キーワード:
看取り
,
病状説明
,
終末期
Keyword:
看取り
,
病状説明
,
終末期
pp.1938
発行日 2023年10月10日
Published Date 2023/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229233
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私が初めて看取りを経験したのは,初期研修1年目の4月のことだった.当時その研修病院は完全主治医制をとっており,休日でも夜間でもまずは担当医のPHSに連絡が来るような状況だった.夜2時頃,心拍が伸びてきていると連絡を受け,上級医に連絡を取りながら急いで病院へ向かった.病室に入ると,すでに家族はベッドの周りに集まっており,家族の視線は「医師」である私に集まった.「先生,この人のためにしてあげられることはありますか?」と聞かれ,当時の私は何も答えることはできなかった.結局,心拍が停止し上級医が来院して死亡確認するまで,私は病室の中で置物のように待っていることしかできなかった.
家族の「最期に何かしてあげたい」という思いに対しどう答えたらよかっただろうか.1つは,患者さんと家族が過ごす最後の時間を大事にしてあげるべきであったと今となっては思う.患者さんと家族にとって,患者さんの死に立ち会うという人生の大事なイベントにおいて医師というのは直接の関係者ではない.医師として患者さんにできることがそれ以上ないのであれば,せめて病室の外に出て患者さんと家族だけの時間をつくってあげるべきであったと思う.
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