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盛暑の候,皆様いかがお過ごしでしょうか? 今月号の特集は「内視鏡下鼻副鼻腔手術—エキスパートに学ぶスタンダードな手術手技」です。私が編集委員を仰せつかって早2年,いつかはESSに関する企画を,できれば動画付きで…と考えておりました。満を持しての発刊です。お忙しいなかご執筆頂いた先生方には御礼申し上げます。この4月でピリオドを打った「平成」は内視鏡手術の時代であったと思います。平成元年卒の私が最初に目にしたESSは,ブラウン管テレビと大きなCCDカメラで行われていました。間もなくしてCCDカメラがコンパクトになり,内視鏡も鮮明で明るくなり,特にこの10年はハイビジョンカメラから3Dや4Kへと画質も飛躍的に向上しました。それに並行して手術ナビゲーションやさまざまな手術器具,さらにはロボットも開発され,内視鏡手術は患者さんにとってどんどん低侵襲で安全なものになってきました。
ESSの適応は,炎症から良性腫瘍,また最近では頭蓋底疾患や悪性腫瘍に広がっています。いずれはESSにロボットや遠隔手術が導入されるのでしょう。これからもさらに発展していくと期待できます。しかし一方で,ESSには眼窩損傷や頭蓋損傷といった重篤な手術時副損傷のリスクがつきまといます。ヒヤリ・ハット症例も含めれば,本邦における副損傷の発生頻度は看過できない状況にあると考えています。ESSの術者には,徹底的な病変の除去による疾患の治癒,および副損傷を避ける安全な手術操作,の2つが求められます。これらは,ともすれば相反する事柄にもなりますが,両立させなければなりません。そのためのキーワードは,「スタンダード」だと思います。スタンダードな術式を習得してはじめてアドバンスがあります。平成から令和に時代が移っても,スタンダードの重要性は不変です。本特集がより根治的かつ安全なESS実践の手助けとなれば幸いです。また本号には2本の原著論文も掲載されています。いずれも興味深い内容です。ぜひご一読いただければと思います。それでは,時節柄どうぞご自愛くださいませ。
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