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本書は1999年に刊行された『耳鼻咽喉・頭頸部手術アトラス 上巻』の改訂第2版である。耳鼻咽喉科分野の手術書としての草分けは61年に本邦で初めて刊行され,多くの耳鼻咽喉医に読まれた『耳鼻咽喉科手術書』があり,77年には手術の図を豊富に取り入れた『耳鼻咽喉手術アトラス』が刊行された。私も同アトラスを繰り返し読み込んで手術室に入り,育った一人である。その後医療機器の発展や医療技術の飛躍的向上,さらには患者のquality of lifeに沿った治療概念が重視されるようになり,内容を一新した『耳鼻咽喉・頭頸部手術アトラス』が企画され,初版として99年に上巻「耳科,鼻科と関連領域」,2000年に下巻「口腔・咽喉頭,頭頸部」が発刊された。医学部で耳鼻咽喉科学講座の指導者になっていた私は,初版では執筆者として参加し,診療や手術の指導をする立場で携わることができた。それまでの手術書とは異なり,術式や手技の実際をイラスト化し,専門家によって臨場感あふれる図説になったことで,初心者は初めての手術のシミュレーションとして,熟練医は術前に術式を確認する書として,多くの耳鼻咽喉・頭頸部外科医から支持を得たことを執筆者の一人として誇りに思っている。
改訂第2版の本書は,監修者の森山寛氏が述べているように,低侵襲性の手術手技や治療概念の変化に沿い,それらを実現するための検査・手術機器の飛躍的な発展に沿って大胆に改訂されている。特に初版刊行時にはほとんど普及していなかった新しい手術概念のもとに,斬新な手術術式が加わっていることに注目している。耳科領域の内視鏡手術や,内視鏡下鼻内頭蓋底手術など,患者にとって侵襲の少ない機能的手術の進歩は目を見張るものがある。それらを可能にした手術支援機器の発達が述べられ,それらを学んで発展させた若手の指導医による執筆は新鮮で説得力がある。
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