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頭頸部には呼吸や摂食・嚥下など生命維持に必須の臓器とともに,聴覚や視覚,嗅覚や味覚などの感覚器,発声機能を司る喉頭など,ヒトが「人」として生きるために欠かすことができない多くの臓器が存在する。このため,頭頸部に発生した悪性腫瘍の治療に対しては,がんの根治とともに,臓器や機能の維持,生活の質(QOL)の維持が求められる。この困難な命題に対して,1960年代より他の領域に先駆けて手術や化学療法,放射線治療を組み合わせたさまざまな集学治療が全国各地の施設で行われてきた。しかし,がんの根治とQOLの向上を目指す思いは共通していても,術式や化学療法の組み合わせ,放射線量はまちまちで,近年に至るまで標準治療は確立されていなかった。
こうした状況のなか,わが国における頭頸部癌治療の均てん化を目指し,2009年に『頭頸部癌診療ガイドライン』初版が出版された。その後,『TNM悪性腫瘍の分類』と『頭頸部癌取扱い規約』の改訂を受けて2013年に第1回の改訂版『頭頸部癌診療ガイドライン—2013年版』が発刊され,以来5年が経過した。この間,鼻・副鼻腔癌や喉頭・下咽頭癌に対する内視鏡手術は標準治療の1つとして各施設で行われるようになり,免疫チェックポイント阻害薬,甲状腺癌に対する分子標的薬など,従来の抗癌剤と全く作用機序の異なる薬物療法が登場した。さらに,2017年末に改訂されたAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)・Union for International Cancer Control(UICC)のTNM分類では,ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭癌が古典的な中咽頭癌から独立して扱われることになり,p16陽性の原発不明癌はp16陽性中咽頭癌,EBER陽性の原発不明癌は上咽頭癌として扱われるようになった。
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