Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.緒言
長い臨床経過を有する良性混合腫瘍にしばしば悪性変化がみられることは古くから知られており1,2),同一腫瘍内に良性部分と悪性部分の移行病変が認められることから,原発性の悪性混合腫瘍はほとんど存在せず良性混合腫瘍の悪性化したものに外ならないと考えられている1,3〜5)。しかし何故長期間存在する良性混合腫瘍が悪性化するのかなどといった癌化の病因論に立ち入った報告はみられない。
最近著者らは10年以上の長い臨床経過を有する耳下腺由来混合腫瘍の2症例を経験し,病理組織学的に検討した結果,両症例ともに腫瘍組織の一部に異型細胞の増殖がみられ,それに近接して強い線維化や瘢痕が共存している像を認めた。従来から瘢痕組織に癌が発生することはよく知られており,瘢痕癌として確立された概念である6,7)。したがって著者らは今回の良性混合腫瘍の悪性化にさいしても,瘢痕形成がなんらか関与している可能性があるかもしれないと考え,腫瘍病因論の立場から瘢痕の意義について若干の考察を加えて報告する。
It is generally thought that primary malignant mixed tumors are extremely rare and the most of them could be developed by malignant transfor-mation from one of the epithelial components. Pathological studies revealed the malignant changes arising in the vicinity of cicatricial and fibrotic areas. There may be the possibility that the re-generative hyperplasia in benign tumor becomes excessive in the course of scar formation and re-sults in malignant changes in some cases. We propose here the concept of "scar cancer" for the elucidation of the pathogenesis of these changes in parotid tumor.
Copyright © 1988, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.