増刊号 画像診断パーフェクトガイド―読影のポイントとピットフォール
部位別診断法
Ⅳ.喉頭・気管・食道
喉頭・気管外傷
溝上 大輔
1
,
冨藤 雅之
1
,
塩谷 彰浩
1
1防衛医科大学校耳鼻咽喉科学講座
pp.234-240
発行日 2014年4月30日
Published Date 2014/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102841
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画像診断の狙い
喉頭・気管外傷は,前頸部への鋭的もしくは鈍的な外力によって生じるもので,呼吸,発声,嚥下の障害をきたす。解剖学的には,喉頭・気管は後方を頸椎,上方は下顎骨,下方は鎖骨で保護されたうえに,種々の筋肉で保持された可動性に富む器官であるため外力による損傷は受けにくい。そのため,耳鼻咽喉科医であっても喉頭・気管外傷を経験する機会は比較的少ない。原因としては野球などの球技,格闘技,交通外傷によるものが多く,交通外傷では通常,多発外傷の一部として起こる。喉頭外傷は,皮膚損傷を伴って気道が外界と交通する開放性損傷と交通しない閉鎖性外傷に分類される1~3)。治療の目的は,いずれにおいても急性期の気道管理およびその後に後遺症となりうる呼吸・音声・嚥下障害の防止である。急性期の喉頭外傷を見逃せば,窒息など気道緊急の原因となりうる。一方,喉頭・気管への傷害が高度な場合や初期治療が十分に行えなかった場合,瘢痕性狭窄により呼吸や音声・嚥下の障害をきたす可能性がある4)。診断(傷害の部位・程度)は,視触診,内視鏡検査とCTによる画像診断を組み合わせて判断する。喉頭・気管の枠組みの破壊・偏位があるかどうかの判断には画像診断が必須である。軟骨の評価にはCTが最も有用で頻用されてきたが,さらに近年ではマルチスライスCTで得られた高分解能データから再構成される冠状断,矢状断に加えて3D-CT画像も利用できる5)。画像診断の進歩は診断能を飛躍的に進歩させているだけでなく,患者や家族が病態を理解しやすいので説明にも有用である。
本稿では,喉頭・気管外傷における画像診断のポイントや注意点について自験例を呈示しつつ述べる。
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