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Ⅰ 疾患の概説
鼻副鼻腔炎は,耳鼻咽喉科領域で最も頻度の高い炎症性疾患である。原因には,ウイルスや細菌による感染性の炎症を主体とするものとアレルギー性の炎症を主体とするものに大別されるが,両者が混在するものも少なくない。鼻副鼻腔炎については,2007年にヨーロッパ鼻科学会による診断治療のガイドライン(EPOS),European Position Paper on Rhinosinusitis and Nasal Polyps 20071)が呈示され,2010年には日本鼻科学会より急性鼻副鼻腔炎診療ガイドライン2)が呈示されている。後者から引用すると,「急性に発症し,発症から4週間以内の鼻副鼻腔の感染症で,鼻閉,鼻漏,後鼻漏,咳嗽といった呼吸器症状を呈し,頭痛,頰部痛,顔面圧迫感などを伴う疾患」を急性鼻副鼻腔炎と定義している。慢性鼻副鼻腔炎は,一般に上記の症状が3か月以上持続している状態とされている3)。EPOSでは,鼻副鼻腔炎を①急性化膿性鼻副鼻腔炎,②鼻茸を伴わない慢性鼻副鼻腔炎,③鼻茸を伴う慢性鼻副鼻腔炎に大別し,それぞれについて推奨しえる診断,治療法をまとめている。詳細については,それぞれのガイドラインを参照いただくこととし,本稿では,急性,慢性に分類し,小児,成人について,それぞれのガイドラインのポイントを抽出した。最初に,ガイドラインはあくまでガイドラインであり,現在得られているエビデンスに基づいてまとめられたものであり,エビデンスが得られていない治療法を否定するものではなく,現時点で明確なエビデンスが得られていないにすぎないことに留意していただきたい。なお,急性鼻副鼻腔炎については,日本鼻科学会の急性鼻副鼻腔炎診療ガイドラインを基本とし,EPOSとの違いを付記する形とした。
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