特集 最新の診療NAVI―日常診療必携
Ⅵ.外傷診療NAVI
1.鼓膜穿孔・耳小骨連鎖離断
三代 康雄
1
1兵庫医科大学耳鼻咽喉科
pp.157-161
発行日 2012年4月30日
Published Date 2012/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102150
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Ⅰ はじめに
外傷性鼓膜穿孔は日常診療でしばしば遭遇する外傷性疾患であり,その発生頻度は10万人当たり1.4~8.6人という報告がある1)。穿孔をきたす原因は,①直達性と,②介達性に大別される。直達性鼓膜穿孔は原因となる物体が直接鼓膜に作用して生じる穿孔で,綿棒や耳かきが原因であることが最も多く,ほかに無生異物(石,薬品など)や虫などの有生異物の侵入,花火や溶接の火花による熱傷などにより起こる。耳かき外傷はわが国では最も頻度が高いが,日本人特有のもので,耳掃除中に転倒したり,子どもや犬に飛びつかれたりして生じることが多い。一方,介達性鼓膜穿孔は物体が間接的に関係して起こる穿孔で,殴打(特に平手打ち),飛行機搭乗,潜水,頭部外傷などにより起こる。頭部外傷(特に側頭骨骨折)による鼓膜穿孔は顔面神経麻痺や耳小骨離断などを合併することが多い。また稀なものとして,耳鼻咽喉科診療のカテーテル通気が原因になることがある。特に鼓膜の菲薄化した症例では,通気に当たっては細心の注意が必要である。
一方,外傷性耳小骨連鎖離断も原因として,直達性と介達性に分けられるが,直達性としては耳かき外傷,介達性としては頭部外傷が多い。頭部外傷では側頭骨骨折,顔面神経麻痺を合併することが多く,また受傷直後にはほとんどの症例が意識障害を伴っているため,耳鼻咽喉科を受診するのは,ある程度外傷が落ち着いて難聴を主訴に受診することが多い。
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