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Ⅰ.はじめに
現況では,嚥下障害患者に対する訓練はほとんどが病院で行われており,耳鼻咽喉科診療所で嚥下障害に対する診療を行っている耳鼻咽喉科診療所は多くない。しかし,類をみない高齢化社会を迎えたわが国において,嚥下障害を抱える在宅患者への対応は急務であり,日本耳鼻咽喉科学会のガイドライン1)の出版により,耳鼻咽喉科診療所がその役割を果たす機会が増えることが期待される。
筆者ら2)は,医師会との連携を図りながら,診療所外来および訪問診療として嚥下障害患者の診療を積極的に行ってきた。その経験から,在宅患者に対しての嚥下訓練に際して,言語聴覚士や訪問看護ステーションへの情報提供や指示の手段として,いわゆる嚥下訓練実施計画書の必要性を感じていた。保険診療上,摂食機能療法の診療報酬請求を行う場合には,診療計画書に基づいて嚥下訓練を行うことが義務づけられている。したがって摂食機能療法を行っている病院では,当然,嚥下訓練実施計画書が作成されているが,病院で使用されている計画書の多くはリハビリテーション総合計画書などの一部として作成されており,嚥下訓練に特化されているものは少ない。また,病院と診療所とでは,対象とする患者の病態や嚥下訓練を施行する環境も異なる。これらの点から,筆者らは診療所の特性に根差した嚥下訓練実施計画書(以下,計画書と略す)の必要性を考え,兵庫県耳鼻咽喉科医会福祉医療委員会を中心に耳鼻咽喉科診療所用嚥下訓練実施計画書を試作した。本論文ではその内容を紹介するとともに,有用性と問題点について検討したので報告する。
To accomplish adequate treatment of dysphagia at ENT clinic,precise planning of rehabilitation should be established. A planning chart of rehabilitation for clinic use is newly designed and reported. The chart is characterized by clinical base of treatment of dysphagia compared as hospital base. Several points regard as these speciality derived from the experience of practicing dysphagia rehabilitation in clinic are reported.
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