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Ⅰ.はじめに
陽電子放射断層撮影装置(positron emission tomography:PET)は広く普及し,頭頸部扁平上皮癌において診断に汎用されている。PET薬剤として,多くは糖代謝のイメージングとして使われる18F-fluorodeoxyglucose(18F-FDG)が用いられている。低酸素のイメージングとして18F-FMISO,核酸合成のイメージングとして18F-FLT,アミノ酸代謝のイメージングとして11C-methionineなども悪性腫瘍に対して用いられるが,今回は保険適応として認められているFDG-PETについて概説する。
まず,臨床医として基本的なFDG-PETに対する理解は不可欠である。検査結果の理解も必要であるが,それ以前に必要な部分は,①放射線被曝,②FDG製剤のコスト,③血糖と考える。FDG-PET/CT(PET/CT)の検査を1回行うと約20 mSvの被曝を患者は受ける。18F-FDGの半減期は約109分なので1日経てば,ほぼ被曝の問題はない。FDG-PETは有用な検査ではあるが,被曝の問題があるので本当に必要な症例に対して行うことが肝要である。また,18F-FDGを作るにはサイクロトロンが必要であるが,サイクロトロンを有する施設は限られる。そのため,多くの施設ではFDG製剤がデリバリーで供給されており,高額なFDG製剤を購入している場合が多い。そのような場合,検査直前でのキャンセルは病院にとって大きな損失になる。最後に血糖の問題あるが,FDGはグルコースに非常によく似た物質であり,血糖値が高ければ腫瘍への集積が低下して正確な評価が困難となる。また骨格筋への集積増加などバックグラウンドが高くなるため腫瘍の検出感度が低下する。特に糖尿病患者では検査前の血糖コントロールが重要になるので,各施設で定められた方法で絶食や点滴内容の変更などを確実に行うことが必要である。
また検査結果に関して,小さな腫瘍は実際の集積より小さく測定されてしまう現象(partial volume effect)が重要である1)。2cm以下の腫瘍に関しては実際の集積より小さなstandardized uptake value(SUV,半定量的に集積の程度を表したもの)となる。SUVmaxも同様に小さくなるため,2cm以下の腫瘍も含めてSUVmaxを用いた解析を行う場合はこの影響を考慮しなければならない。また,近年はPET/CTが普及し,PET画像とCT画像をfusionすることにより,集積部位の形態的な位置を確認できるようになっている。しかし,fusion画像は微妙なズレが生じている場合があり,fusion画像だけではなく,PET画像,CT画像もそれぞれ読影が必要であり,総合的な判断が要求される(図1)。
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