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臨床的特徴
肺の扁平上皮癌は50~60歳台に好発し,男性に多い.好発部位は肺門部近傍の中枢部だが,女性では,末梢肺野に発生する場合が多い.他の組織型の肺癌に比べて,転移率はやや低い.重要な初発症状に血痰がある.危険因子には,喫煙がよく知られている.また,職業性肺癌としてクロム肺癌がある.扁平上皮癌では,ときに高カルシウム血症を伴うことがある.これは,腫瘍が副甲状腺ホルモン関連蛋白(parathyroid hormone related protein,PTH related protein)を産生するためである.放射線および化学療法は比較的有効とされている.
正常平上皮の特徴
扁平上皮癌は,扁平上皮への分化を示す悪性腫瘍である.扁平上皮への分化は,病理学的には角化と細胞間橋の形成がその指標となる.正常な角化型扁平上皮では,基底側から表面に向かって,基底細胞層,有棘細胞層,顆粒細胞層,角化層という層構造が見られる.細胞間橋は有棘細胞層において明瞭で,隣接する細胞の細胞膜の間に,細胞膜に直行する等間隔の突起として認められる.細胞膜と細胞間橋は全体として梯子状に見える.角化層では,細胞質の好酸性が増す.一般に,角化自体は細胞質に見られる現象であるが,角化するとともに核も濃染して小型化し,いずれ消失する(図1).錯角化(parakeratosis)や異角化(dyskeratosis)などの異常角化では,核が消失せず濃縮状の小型核が認められる.細胞全体の形状も,基底側では立方形あるいは球形に近いが,表面に移行するとともに円盤状の扁平な細胞に変化する.扁平上皮組織では,このような基底細胞層から角化層へ至る成熟過程が存在し,このような成熟傾向の有無を“極性がある・ない”と表現する.
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