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頭頸部扁平上皮癌における癌幹細胞とその治療戦略
Cancer stem cells in squamous cell carcinoma of the head and neck and therapeutic strategy
近松 一朗
1
Kazuaki Chikamatsu
1
1群馬大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科
pp.335-344
発行日 2012年5月20日
Published Date 2012/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102193
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Ⅰ はじめに
癌組織に存在する癌細胞は,すべての細胞が無限の自己複製能や未分化能を有しており癌を形成する能力があると考えられていた。しかし近年,正常組織が自己複製能と分化能を有する組織幹細胞というポピュレーションによって維持されているのと同様に,癌組織中にも癌組織の維持にかかわる癌幹細胞を中心とした階層性が構成されているといわれている。すなわち,癌幹細胞仮説である。1997年に急性骨髄性白血病において白血病幹細胞の存在が示され1),その後2003年には固形癌である乳癌において癌幹細胞の存在が示された2)。これらのことにより,臨床における癌の再発や転移,治療抵抗性に対する癌幹細胞の関与が考えられるようになった。これまでに,頭頸部扁平上皮癌を含めさまざまな癌腫において癌幹細胞が同定されている3~6)。また,抗癌剤の使用や放射線照射によって癌幹細胞の比率が上昇することが報告されている7,8)。ここでは,頭頸部扁平上皮癌を中心に癌幹細胞の存在とそれに対してどのような治療戦略が考えられるかをわれわれの行ってきた研究に沿って概説する。
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