特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅱ.病原体をマスターする
2.真菌症
1)カンジダ
加瀬 康弘
1
1埼玉医科大学耳鼻咽喉科
pp.136-140
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101832
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Ⅰ 一般的特徴
カンジダは常在菌であり,自然環境,人体に広く存在し,例えば,健康人の口腔からも30~50%で検出される1)。一般にカンジダ属はアスペルギルス属にみるような分生子頭を形成しない酵母様真菌に属するが,時に菌糸も形成する二形成真菌である。150種のカンジダが存在するが,そのうち15種類が人体に病原性をもたらす2)。真菌症には病変部位により表在性真菌症と深在性真菌症に分類されるが,剖検数に対する深在性真菌症の発生頻度によると,カンジダ症はアスペルギルス症に次ぐ頻度である3)。表在性真菌症の代表である口腔カンジダ症ではCandida albicansが最も多く検出され,約4割を占める4)。一方,耳鼻咽喉科診療ではあまり経験することはないが,深在性カンジダの代表であるカンジダ血症でもC. albicansが小児,成人とも4割から7割と報告され最多である2)。しかし,最近では抗真菌薬に対する抵抗性の点からnon-albicans Candidaによるカンジダ血症も問題になっている5~7)。
カンジダ症は,易感染性宿主に対する日和見感染であるが,Pappas2)によれば,①抗菌薬使用による正常細菌叢変調に起因するカンジダ菌量の増加,②皮膚,粘膜の損傷すなわち,長期のカテーテル留置,手術や外傷,化学療法や放射線治療などによる重度の粘膜びらん,③免疫機能不全,特に細胞性免疫機能の低下をきたす状態など,が誘因となる。具体的な危険因子を表18)に示す。
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