鏡下囁語
日本人的思考
甲能 直幸
1
1杏林大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸科
pp.221-223
発行日 2010年3月20日
Published Date 2010/3/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101562
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私には何人かの恩師がいる。その1人に故櫻井栄先生がいる。卒後9年目,母校から関連病院である横浜の警友病院に就職したが,このときに強く誘って下さったのが部長をされていた櫻井先生である。正月にはご自宅に招いていただき,奥様の美味しい手料理で楽しい時間を過させていただいた。そしてこのときに一冊の本をいただいた。須田勇著『第二の知』1)である。櫻井先生は生理学も学ばれていたので,須田先生は櫻井先生の兄弟子に当たる方と思われる。流し読みをし,生理学者で林 操の弟子に当たる方が書いた非常に難解で,とっつきにくい本であると感じた。また,その頃の私には,興味の対象は他に沢山あり,ゆっくり読む時間もなかったので,結果,家の本棚の奥に眠ってしまっていた。その後,米国に3年間留学をする機会を得た。引越しのダンボール箱に何となくこの本を詰め込んだ。ニューヨークでは当初,一人で生活していたため週末にはもて余すほどの時間があり読書にふけることができた。
熟読し内容を理解するにつれて,この本により今までの自分の思考が変化したことを実感し,今,振り返ってみると,後の人生に大きな影響を与えてくれた書物と思っている。
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