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Ⅰ.放射線治療の原則
放射線の線量効果曲線には腫瘍の治癒線量曲線と正常組織の耐容線量曲線とに図1に示したごとく重なりがあるために,線量が多すぎると必ず有害事象を引き起こしてしまう。例えば,限局していれば30Gyで容易に制御できる悪性リンパ腫でも腫瘍が全身に広がれば,全身に30Gyの照射は不可能なので放射線治療で制御することはできない。一方,悪性黒色腫という放射線感受性のきわめて低い腫瘍であっても限局していれば,多くの線量を照射しても重篤な正常組織障害が発生しないので制御が十分期待できる。このように放射線治療による腫瘍の制御は,腫瘍の放射線感受性と正常組織の耐容線量とのバランスの上に成り立っている。最も治療上の利益の大きいのは,腫瘍の治癒線量曲線と正常組織の耐容線量曲線の差が最も大きくなる線量を選択することである。臨床では多くの場合,正常組織の障害を5%以下に押さえて,80%以上の局所制御率が期待できる線量が選択されている。集学的治療によって,2本の線量効果曲線のうち,腫瘍の治癒線量曲線を左方に,正常組織の耐容線量曲線を右方に移動させることができれば,あるいは正常組織の耐容線量曲線が左方に移動するよりも,腫瘍の治癒線量曲線をより左方に移動できれば治療成績の向上が期待できる1)。
今世紀に入り放射線物理学の発展とコンピュータ技術の進歩により,放射線治療機器・放射線治療周辺機器の開発が急ピッチに進み,周辺の正常臓器への照射線量を極力減少させる照射法が可能となってきた2)。また,小線源治療やアイソトープを用いた治療も進歩し,腫瘍への線量集中性が改善している。そこで,放射線治療機器の進歩を中心に新しい放射線治療方法について概説する。
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