今月の主題 癌治療の最前線
放射線治療の進歩
橋本 省三
1
,
近藤 誠
2
Shozo Hashimoto
1
,
Makoto Kondo
2
1慶応義塾大学医学部・放射線医学
2国立東京第二病院・放射線科
pp.998-1000
発行日 1982年6月10日
Published Date 1982/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402217782
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最近の癌の集学的治療における放射線治療の立場
放射線治療の患者数は年々増加の一途をたどっている.癌の発生-発見の頻度が上昇しているのと,高齢者の癌症例も多くなり,手術せずに侵襲の少ない放射線治療にまわる者が多くなったことがその原因であるが,集学的治療(multimodaltreatment)ということで放射線治療医と他科との協力態勢が深まったことも見逃せない.各科の専門医が協同して癌治療にあたろうという集学的治療はおそらく最も実りの多い分野であろう.
Hodgkin病はかつて不治であったが,深部X線装置にひき続くコバルト-60や,リニアックなどの進歩した装置の導入により,全リンパ節照射(total nodal irradiaton)のような超広範囲予防照射が可能になり,その治癒率は大幅に向上した(図),現在では病期によっては化学療法を組み合わせて治療するようになっており,成績はさらに改善している.たとえば放射線と抗癌剤を併用すると無病生存率は高いが,無精子症が必発したり,2次発癌の頻度が高くなるので,初回は放射線だけで治療して,再発例に対してあらためて抗癌剤を使っても,全体の予後が変らない病期のあることがわかってきた.
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