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Ⅰ.はじめに
頭頸部癌へは外科的治療に加えて,放射線治療・化学療法などが症例に応じて選択される。そのなかでも外科的治療では,近年,遊離筋皮弁などの再建外科の発達とともに進行癌症例における拡大手術症例が増えている。しかし,拡大切除を進めれば,当然,頭頸部の生理機能である嚥下ならびに音声に関する正常組織は失われてしまう。そして,治療終了後の社会復帰のためにも,失われたその機能を何らかの方法で再獲得しなければならない。特に嚥下機能は,原発部位切除のみならず頸部郭清術や再建筋皮弁,気管切開術などのさまざまな要因が重なって,最も誤嚥にかかわる咽頭期嚥下以外にも,捕食や咀嚼といった準備期から,口腔期,そして,食道期までのいくつかの部分に機能低下を生じてしまう1)。
当科では約10年前より多職種参加による嚥下障害治療のチーム医療を行っている。主たるメンバーは耳鼻咽喉科医と言語聴覚士(以下,STと略す),日本看護協会認定の摂食・嚥下認定看護師(以下,Nsと略す),管理栄養士(以下,Ntと略す),歯科衛生士(以下,Dhと略す)で,口腔外科医(以下,DDSと略す),理学療法士(以下,PTと略す),作業療法士(以下,OTと略す)が必要性に応じて参加している。同じく約7年前より院内組織として稼働している栄養サポートチーム(以下,NSTと略す)と協調する形で,薬剤師や検査技師なども加わって院内全体の摂食・嚥下・栄養の治療を担当している。
対象は主に脳血管障害であるが,約10%は頭頸部腫瘍に関する嚥下障害例である。頭頸部癌術後の嚥下障害に対する対応といっても,特別変わった方法が存在するわけではなく,脳血管障害や神経・筋疾患による嚥下障害例に行ってきている訓練とほぼ同じような手技を症例に応じ,いくつかを組み合わせて行っているが,今回は通常の脳血管障害などの中枢性嚥下障害例と比較しながら,頭頸部癌術後の嚥下障害例の特徴と対応のポイントをまとめた。
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