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I はじめに―内耳の3次元画像が必要な理由
内耳の病変である難聴やめまいの診断には,内耳形態の病理組織学的な確認が重要であるが,一般臨床の現場では生体内耳を直接観察することはできない。このため,ABRやENoG検査などの電気生理学的検査法や純音聴力検査などの聴覚心理検査が主として用いられてきたが,これらは内耳病変の直接的な確認ではなく間接的な検査法であるため医学的診断としては少なからぬ制限がある1~3)。
従来の画像診断法での内耳の観察には大きな問題があった。その理由は,内耳は蝸牛,前庭,三半規管,内耳道など複雑な立体構造を有し,またその大きさがミリ単位の微細な器官であるため,従来の2次元的な情報ではたとえ経験を積んだ耳鼻科の専門医であっても画像診断で正常と異常の鑑別さえ困難な場合が少なくないからである4)。
人体は3次元的に構成されているが,従来のX線情報ではCTに代表されるような2次元的な切断面における情報が主体であった。このため,各断面の不連続な画像情報を基にして病変の範囲や病態そのものを視覚的に統合して把握することは,臨床経験の少ない若い医師や医学生には困難であり,インフォームド・コンセントを受ける患者やその家族にとっても必ずしも理解しやすい視覚材料とはいえない。
最近のコンピュータ技術の著しい発展に伴って,最新の画像撮影機器が臨床の各分野に新しく導入されたため,耳鼻咽喉科領域におけるさまざまな病態の画像診断にも3次元画像が可能となってきた。特に内耳の3次元CTとMRIでは,解剖の図譜を見るように立体的に内耳の全体像を観察することが可能となり,人工内耳の術前検査として蝸牛内に電極挿入のためのスペースや外リンパの存在を確認するためにも有用である。これらの新しい画像処理システムの革新的な進歩により,従来では不可能であった内耳性病変による難聴やめまいに対して新しい画像診断の可能性が生まれようとしている5~9)。
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