- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
地方の中核をなす病院の院長からうかがう話は,医師不足と地域医療の崩壊という悲観的なものが圧倒的に多い反面,さまざまなアイデアやHP,宣伝の努力などから医師の確保に成功している病院もみられます。しかし,病院の努力はもちろん大切な要件ですが,もともと僻地や生活条件の悪い地域に努力やアイデアという言葉では解決できない問題も存在しているように思います。ひとつの策として今後,開業するためには僻地といわれる病院で一定期間働くことを義務化するという意見や,逆にそのように職場の自由度をなくすことはある意味では憲法違反という意見,さらに議論自体に不安を感じる若い医師が制度化を恐れ,その前に駆け込み開業をするのではという心配意見 など,医師偏在に対する明確な答えは出ていません。
新臨床研修制度の2年の研修を終え,いわゆるマイナー科に入局してきた医師の全身を診る態度,内科的疾患への理解は従来より向上しているように感じられます。しかし,2年の研修期間中,9時~5時の就労規定を盾に外科処置中に権利を主張してぴったり5時に帰った者が出現したこと,義務でいやいや回った外科系研修の途中で登校拒否ならぬ脱落医師が何人も出たことは,1病院だけの問題かもしれませんが驚きです。最近,私立のある総合病院の院長と話していた際,やはり昔とはずいぶん違ってしまったなということがありました。その病院で内科の当直医確保のためにアルバイトを募集すると,常に複数の開業医が申し込んでくるとのこと,逆に常勤医を募集したら応募した何人かの医師の最大条件は当直したくないということだったそうです。開業も経営がきびしく,他院で当直料を稼がねばならない時代になったのかもしれません。また当教室の医師が中・高校の耳鼻科の学校検診に行った際,元婦人科医という検診アルバイト専門の医師が同時に来ており,額帯鏡は付けているものの光は当たっておらず,耳鼻科医としては首をかしげざるを得なかったとのこと,確かにフリーター医師は今に始まったことではありませんがやはり違和感をもちます。その他,世の中のジェネリック薬品礼讃など今後,次世代の医師が直面する医療がどのような形になっていくのか,私たち中・高年医師の責任も重いと感じています。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.