- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
耳鼻咽喉科における論文は症例報告,臨床統計,臨床研究,基礎研究などに大きく分けられ,当然のことですが,時代によりさまざまな変遷を経て現在に至っています。言語も日本語,英語のほか,海外誌にドイツ語で投稿されていた先生方もいました。日耳鼻機関誌であるANLにもドイツ語,仏語論文が掲載されていたときがあり,abstractは英語とドイツ語が必須の時期もありました。今の若手の先生には信じられないことと思います。本誌『耳鼻咽喉科・頭頸部外科』もかつては『耳鼻咽喉科』という名称でたくさんの貴重な症例報告,臨床統計の論文投稿がありました。私も若い頃に初めて書いた論文の掲載は,本誌だったと記憶しています。私は昭和53(1978)年の卒業ですが,その頃は英語の論文投稿の重要性はもちろんのことでしたが,まだそれほど多くはなく,日本語論文が優勢でした。その後,当然のことながら英文誌への投稿が増加し,impact factorの出現により飛躍的に英語論文の投稿にシフトしていきました。特に教授選におけるimpact factorの評価の占める割合が高くなり(特に基礎系),総合点は何点かということが多く語られました。しかし外科系では,またまたその反動が起こり,「impact factorの高過ぎる先生は逆に臨床は大丈夫なのか?」というような逆の評価がなされはじめ,現在はある程度のレベルに落ち着いてきた感があります。その間,本誌も少しずつではありますがversionを変えながら,また総説を掲載するライバル誌の出現に遭遇しながら,その存在感を十分に示してきたと思います。ただ,昨今の耳鼻咽喉科勤務医の減少にリンクして症例報告の投稿も若干減少傾向にあります。マンパワーの小さい施設では臨床の仕事に追われ,まとめる時間の確保が困難なこと,さらには基礎研究を行う余裕も減っています。しかしこういうときこそ若手の勤務医,開業医の先生方に貴重な症例の検証,報告をしてもらうことの意義は高いと考えますし,日本語でいくつか書き上げると,次は英語で書いてみようという意欲が出ると思います。Impact factorはすぐには期待できませんが,英語論文biginnerの若手医師のために,本誌も近い将来英文のcase reportを掲載するべく変遷していきたいと思っております。
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.