--------------------
あとがき
竹中 洋
pp.450
発行日 2007年5月20日
Published Date 2007/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101109
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本誌79巻2号で触れた,『温暖化と植生』についての続きを少し記します。植物には暖かさの指数という活動の指標があります。簡単にいえば摂氏5 ℃以上で温帯植物の重要な生命現象が営まれています。普通は月ごとの平均気温の積算で表現されます。当然温暖化が進めば積算温度も変わります。例えば,私も含めて多くのスギ花粉飛散予測者(あくまで予想者ではない)は標準木を中心に『今年の花芽の量は少ない』と判断しました。昨年の夏に台風が多かったこと,熱帯夜が少なかったことも当然のことながら根拠となっています。
ところが,3月に入って突如のスギ花粉嵐に襲われました。病院は患者さんに襲われることになりました。日最高気温が摂氏12 ℃を超え,湿度が低くなると関西ではスギ花粉が飛び交います。例年だと2か月をかけてゆっくり飛び出すものが,一気に飛散を始めます。『少ない出来高でも短期間に集中して効率よく飛んだ』のが今年の関西のスギ花粉飛散です。とんだところで温暖化の副産物が出現してしまいました。大きな教訓を得ました。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.