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Ⅰ はじめに
線維芽細胞は組織や粘膜の支持細胞の1つである。細胞外マトリックス(ECM)産生やMMP,TIMPの産生制御により慢性炎症に伴う線維化の過程に必須の細胞であることは,以前よりよく知られている。近年,線維芽細胞はサイトカインやケモカインを産生することが証明され,上皮細胞と同様に炎症反応に深くかかわっていることがわかっている。線維芽細胞の産生するケモカインの中に好酸球遊走作用をもつRANTES,eotaxin,MCP-4などがある1~3)。線維芽細胞の好酸球遊走因子の産生量は他の細胞と比較して多く,好酸球性炎症における好酸球遊走に関与している可能性がある。
また線維芽細胞はケモカインを相乗的に産生する能力をもっており,ある2つの刺激を受けた場合,2つの刺激それぞれ単独では産生量は少ないが,2つの刺激を同時に受けると非常に大量のケモカインを産生することがある。例えば,線維芽細胞をIL-4とTNF-α,あるいはIL-13とTNF-αで刺激すると単独刺激より数倍から数十倍のeotaxinを産生する3,4)。したがって,線維芽細胞は線維化の過程に寄与するだけでなく,eotaxinの相乗的産生を含めたケモカイン産生を通して好酸球遊走においても重要な働きをしていると考えられる。実際,われわれ耳鼻咽喉科医が治療にあたる上気道の慢性炎症である慢性副鼻腔炎の副鼻腔粘膜においては,好酸球浸潤が頻繁に認められる。
また線維芽細胞は人間の身体の部位により特性がある5)。このことは,同じ線維芽細胞でも炎症の起こる部位により線維芽細胞の炎症へのかかわり方が異なっていることを意味している。鼻・副鼻腔線維芽細胞の役割を解明するために,鼻・副鼻腔線維芽細胞と他の部位の線維芽細胞(特に肺線維芽細胞)を比較して実験を行い,これまでにいくつかの鼻・副鼻腔線維芽細胞の特徴が明らかになった。鼻・副鼻腔線維芽細胞の特性を解説し,鼻・副鼻腔慢性疾患,特に慢性副鼻腔炎における線維芽細胞の役割について述べる。
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