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I.はじめに(エビデンスについて)
最近,エビデンスとか,ガイドラインとか,EMB(evidence-based medicine)とかいう言葉が,文献や医療現場に浸透している。
そこで老生も,まだ少しでも臨床や教育に関係している限り,無関心でいることは許されまいと考えて勉強をはじめた次第である。
すでに,日本耳鼻咽喉科学会においても,会報の専門講座において,耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療とエビデンス1)にはじまる解説が連載され,ほかの専門誌2)や関連学会においても,しばしば解説や討論の場が設けられている。
また日本医師会雑誌でも関連する特集が繰返し組まれている3)。
これらを読んでみると,EBMの導入は,診療レベルの向上が期待されるとともに,これに伴う診療システムの合理化などにより,医療費の節約効果もみられるとのこと。そして,このようなことが可能となったのは,偏りの少ない多くの医療情報が内外から入手できるようになったことなどは理解できたが,現実に診療対象となる症例にこれを直ちに適用するとなると,医師としての経験に基づく裁量権,あるいは患者の自己選択権を奪うことはないか,そしてさらに難しいのは,根拠に基づくガイドライン(evidence-based guideline)といっても,確率的にほかより優れているけれども,100%有効なわけではないし,もし効果が出なかったり,不十分なときには,その理由や次の対策については何も指示されるわけではないことは理解しにくい。
この道の専門家といわれる福井次矢氏4)も,「個々の患者さんへの適応は微妙に異なってくるのが当然で,その“匙加減”こそ,日々患者さんに接している医師の真骨頂といえるでしょう」と述べている。
このほかにも,医療事故に関連したときや,患者のQOLについての訴えの問題も論議の対象となることがある由である。
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