特集 耳鼻咽喉科疾患と高齢者(65歳以上)への対応
1.症候
2)難聴・耳鳴
西村 忠己
1
,
細井 裕司
1
1奈良県立医科大学耳鼻咽喉科
pp.643-647
発行日 2006年8月20日
Published Date 2006/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100731
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Ⅰ.はじめに
日本では世界で類をみない速度で高齢化社会が進んでおり,高齢者医療に対する対策が急務である。われわれ耳鼻咽喉科領域での高齢者の疾患を考えると,聴覚機能の障害はその代表的疾患の一つである。聴覚機能は加齢により徐々に衰えていき,程度に差はあるものの誰もが難聴を経験する。そのため,それらすべてを対象と考えると潜在的には膨大な患者が存在することになる。
現時点では難聴の自覚があっても大部分は年齢による難聴と自己判断し,そのまま放置していることや直接補聴器販売店に行き補聴器を購入していることが多い。しかしながら,それらの難聴の原因は必ずしも老人性難聴からくるものばかりではない。他の疾患が混在していることもあり,疾患によっては適切な治療を行うことで難聴が改善することもある。
このためわれわれ耳鼻咽喉科医は高齢者の耳鼻咽喉科への受診を啓蒙するとともに,高齢者の難聴に対して老人性難聴と切り捨てるのではなく,適切な診察とていねいな説明を行っていく必要がある。
さらに補聴器の適用や効果をよく理解し,補聴器を必要とする難聴者に対しては専門的なアドバイスを行い高齢者医療に積極的にかかわっていくことが重要である。
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