特集 耳鼻咽喉科疾患と高齢者(65歳以上)への対応
1.症候
1)めまい
肥塚 泉
1
1聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科
pp.637-642
発行日 2006年8月20日
Published Date 2006/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100730
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Ⅰ.高齢者のめまい
体平衡の維持には平衡覚のみならず視覚情報,体性感覚情報深部知覚が積極的に用いられている(図1)1)。各感覚器からの情報は,neural integratorと呼ばれる一種の中枢積分器(脳幹や小脳などで構成される)で統合処理され,入力に対して適切な出力が計算される。この出力はいわゆる抗重力筋といわれる筋群,外眼筋などの効果器に送られ,立ち直り,眼球運動などを引き起こして体平衡の維持を行っている。
加齢に伴って,これら感覚器のみならず,neural integratorを構成する脳幹や小脳などにも加齢変化が生じるため,高齢者のめまいの病態は非高齢者の場合よりもより複雑になることがある2)。75歳以上の30%以上が体平衡の異常を訴えているとする報告2)もあり今後,高齢者のめまいに対する理解が日常診療のうえでますます重要になると思われる。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.