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I.はじめに
上顎癌治療は,その過酷さ,美容面への計り知れない影響,嚥下・咀嚼機能,発声などの機能障害のため,耳鼻咽喉科・頭頸部外科医としても最も患いたくない癌の代表であるとまでいわれている。しかし,上顎癌の組織型は約80~90%が放射線感受性の高い扁平上皮癌であり,抗癌剤との併用でかなりの相乗効果が認められることが救いである。このことから,少しでも形態と機能を保存しつつ,良好な治療成績を得ることを目的として,手術,放射線,化学療法の併用による三者併用療法の概念が生まれた。
1960年代,上顎癌に対するオリジナルの三者併用療法が提唱された。まず鼻腔内の腫瘍を,もしくは犬歯窩から上顎洞を開洞して腫瘍を生検する。病理組織を確定後,10 Gy前後の少量の放射線治療を行う。耳介前部から浅側頭動脈経由で顎動脈にカテーテルを留置し,動注化学療法を施行する。続いて犬歯窩アプローチにて壊死した腫瘍のほとんどを摘出する。さらに放射線治療を10~20 Gy行い(計20~30 Gy),動注化学療法を数回併用する。上顎洞の壊死した腫瘍を適宜(週1回など)necrotomyすることによって完全に腫瘍を摘出し,少しでも機能を温存して治癒しようと試みた1)。
現在,本邦で行われている上顎洞癌治療における三者併用療法は,各施設が独自の放射線量・期間・時期,化学療法のアプローチと薬剤,手術の方法と時期,necrotomyの有無を決定している。しかし,再建外科の発達によりen-bloc手術を中心に考える施設も増えてきた2)。さらに時代の流れもあり,10年前に行っていたnecrotomyを病棟のユニットに座らせ,涙ながらに必死に痛みを耐えさせて行うことも到底できなくなってきている。それぞれの施設がそれぞれの症例ごとに考え,ベストだと思われる治療を行っているのが現状であろう。
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