連載 眼の組織・病理アトラス・66
血管新生
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.406-407
発行日 1992年4月15日
Published Date 1992/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410908409
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光受容器としての眼球構造の特徴の一つとして,光が通過する角膜,眼房,水晶体,硝子体に血管が存在しないことがあげられる。そのために組織は透明である。一般に,組織は血管で栄養されるので,生理的な状態で組織が血管をもたないということはきわめて特異なことである。生体には,血管新生促進因子と抑制因子が存在するが,血管をもたない眼組織では,血管新生抑制因子優性の状態にあることが考えられる。しかし,糖尿病や炎症などの病変で,組織損傷や血液眼柵の破綻がおこると,血管新生抑制因子優位のバランスが崩れ,組織修復反応として血管内皮細胞が増殖し,血管が新生される。それによって当該組織は透明性が阻害され,視機能が低下する。血管新生を含む細胞の増殖という創傷治癒反応は本来望ましいもので,生体には無くてはならない現象であるが,それが眼組織では構造と機能の特徴から相反する結果を招来することになる。
角膜は直接に観察できるので,しばしば血管新生の研究に使用される。ここに示す図は,家兎眼の炎症に際して角膜に生じた新生血管の先端部を電子顕微鏡で観察したものである。
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