連載 眼の組織・病理アトラス・37
虹彩の血管新生(虹彩ルベオーシス)
猪俣 孟
1
,
岩崎 雅行
1
1九州大学
pp.1800-1801
発行日 1989年11月15日
Published Date 1989/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410211042
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虹彩の表面に新生血管が形成された状態を虹彩ルベオーシスrubeosis iridisという。虹彩の実質内には血管が存在しているが,血管の外膜には厚い膠原線維の層が存在するので,臨床的には虹彩の血管は観察できない。これに対し,虹彩の新生血管は血管壁が非常に薄く,しかも虹彩の表面に存在するので,その血柱が明瞭に認められる。虹彩ルベオーシスという言葉は,糖尿病患者の虹彩が新生血管によって赤い刷毛ブラシでなでたようにみえたので(図1),糖尿病性虹彩ルベオーシスrubeosis iridis diabeticaと表現されたのが最初である。その後,虹彩の新生血管は糖尿病だけでなく,種々の疾患でも生じうることがわかり,糖尿病性という表現を削除して,虹彩ルベオーシスrubeosis iridisと呼ばれるようになった。ところが虹彩に新生血管が生じても,虹彩は必ずしも赤くならない。たとえば,ごく早期の新生血管は気づかれないことが多いし,また逆に,発生して月日が経過した新生血管は周囲の結合組織におおわれてみえなくなる。このことから,虹彩ルベオーシスという表現よりも虹彩の血管新生neovas-cularization of the irisの方がより適当であるとされている。
虹彩の新生血管は虹彩実質内に存在している血管,とくに静脈や毛細血管から内皮細胞の増殖発芽によって発生する(図2)。
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