今月の主題 血管新生
巻頭言
血管新生
佐藤 靖史
1
Yasufumi SATO
1
1東北大学加齢医学研究所腫瘍循環研究分野
pp.1591-1592
発行日 2000年12月15日
Published Date 2000/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904633
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血管新生とは,既存の血管から新しい血管ネットワークが形成される現象と定義される.血管新生は,個体の発生や発育にとって不可欠の生命現象であるが,成熟個体では,通常は限られた部位でしかみられない.ところが,癌をはじめとしたさまざまな病気では血管新生が生じ,しかも,それぞれの病態の進展と密接に関連することが明らかとなってきた.このため,血管新生のメカニズムを分子レベル,細胞レベル,個体レベルで明らかにし,血管新生を人為的に制御する方法を開発することが望まれている.
血管新生の生物学的な基礎研究の始まりは,1970年代の初めFolkmanが固形腫瘍の発育が腫瘍血管新生に依存しているとの仮説を立てて研究を始めた時期にさかのぼる.しかし,研究が本格化したのは1980年代に入ってからであり,内皮細胞に作用して血管新生を促進あるいは抑制する因子が相次いで同定され,それらに対応する受容体や,シグナル伝達機構についての解析が進められてきた.そして,このようにして得られた分子レベル,細胞レベルでの解析結果は,発生工学の手法を用いて個体レベルで検証されつつある.また,それと並行して,血管新生を抑制する薬剤や,あるいは血管新生を促進する新しい治療法の臨床治験が始められており,まさに血管新生を実地臨床のレベルで論議する時代に突入したと言っても過言ではない.
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