Japanese
English
連載 眼の組織・病理アトラス・142
フォークト・小柳・原田病の脈絡膜血管新生
Choroidal neovascularization in Vogt-Koyanagi-Harada disease
猪俣 孟
1
Hajime Inomata
1
1九州大学医学部眼科学教室
pp.1340-1341
発行日 1998年8月15日
Published Date 1998/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410905972
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
フォークト・小柳・原田病Vog-Koyanagi-Haradadiseaseの経過中に脈絡膜血管新生choroidalneovascularizationが起こることがある(図1,2)。特に臨床的に脈絡膜の炎症が激しい症例,あるいは炎症が長期間持続した症例にみられる。網膜色素上皮細胞の増殖が脈絡膜血管新生と密接に関係する。
フォークト・小柳・原田病は,メラノサイトに対する自己免疫疾患と考えられている。ぶどう膜に多数のマクロファージとリンパ球が浸潤し,活性化されたマクロファージは類上皮細胞または炎症巨細胞となって,破壊されたメラノサイトの色素顆粒を貪食し,慢性肉芽腫性炎症を形成する。しかし炎症細胞の浸潤は,原則的には脈絡膜実質に限局し,脈絡膜毛細管板,ブルッフ膜,網膜色素上皮細胞層,感覚網膜には及ばない。ところが臨床的には,螢光眼底血管造影で示されるように,網膜色素上皮細胞を通して螢光色素が網膜下に漏出し貯留するのであるから,網膜色素上皮細胞には少なくとも機能的あるいは器質的な障害が起こっていることを示唆する。事実,炎症が非常に強い場合,あるいは長期間持続または再燃を繰り返す場合には網膜色素上皮細胞に著明な形態変化を生じる。炎症細胞が網膜色素上皮下に浸潤して,色素上皮細胞は変性,脱落あるいは増殖などの変化が起こる。
Copyright © 1998, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.