連載 眼の組織・病理アトラス・52
血管新生緑内障
猪俣 孟
1
,
岩崎 雅行
1
1九州大学
pp.100-101
発行日 1991年2月15日
Published Date 1991/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410908283
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血管新生緑内障neovascular glaucomaとは虹彩の表面に新生血管が生じること(虹彩ルベオーシスrubeosis iridis)に伴っておこる緑内障をいう。虹彩表面の血管新生は眼組織への血液供給不全の状態,すなわち網膜中心静脈閉塞症,糖尿病性網膜症,頸動脈循環不全などで高頻度におこる。臨床的には,新生血管は初期には瞳孔縁および虹彩根部に観察される。しかし,前房隅角線維柱帯表面の新生血管(図1)は隅角鏡でもその有無を判定しがたいことがある。螢光血管造影を行うと,螢光色素の流入と血管壁からの色素の漏出によりその存在が確認できる。新生血管はやがて虹彩全体に拡がる。臨床的には観察できないが,新生血管は線維柱帯やシュレム管内にも侵入する(図2,3)。
血管新生緑内障の眼圧上昇として2つの機序が考えられる。その1つは新生血管からの血液成分の透過性が高いことによるもので,他の1つは虹彩周辺前癒着によるものである。前者は続発開放隅角緑内障に相当し,後者は続発閉塞隅角緑内障である。新生血管は隣接する内皮細胞相互間の接着が弱く,しかも内皮細胞の胞体には多数の窓構造fenestrationが存在する。したがって,新生血管の内腔から血液の液性成分や血球成分が血管外に出やすい状態にある。
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