- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
緑内障の手術療法は現在,さまざまな術式が検討されている。マイトマイシン併用トラベクレクトミーは,現在最も基本的な術式として受け入れられているが(図1),非穿孔トラベクレクトミー,viscocanalostomyなどの新しい術式が次々と発表される背景には,現在の緑内障手術の術式に誰も完全に満足していないことがある。緑内障の手術療法はかつて,眼圧を正常域へコントロールすることのみを目標としていた。しかし,それぞれの症例において目標とする眼圧が異なるという,「健常眼圧」の概念が広がるにつれ,手術の方向性は変わってきたように思う。これは「どうなれば手術が成功したと見なされるか?」という問題をわれわれに突きつけてきた。かつては眼圧が20mmHg以下にコントロールされれば一応手術は成功したと見なされていたが,もともと眼圧が20mmHg以下である正常眼圧緑内障に対する手術では,むろんこの基準は当てはまらない。眼圧を10mmHg以下にコントロールすることを狙った場合,今度は低眼圧黄斑症などの合併症の問題が出てくる。眼圧は下がったが,視力も下がってしまったというのでは,とても「手術が成功した」とは言えまい。このように緑内障手術療法の評価は,多方面から検討を必要とする時代に入った。そのため,各術式の比較も多方面から検討する必要があり,「どちらの術式のほうが優れている」とは簡単に言えなくなってしまった。これを簡単にまとめると,「合併症と眼圧コントロールの間のどこで折り合いをつけるか」ということに尽きる。
緑内障の手術療法は,濾過手術と流出路再建術という大きな2つの流れがある。これはとりもなおさず「少ない合併症」と「眼圧下降」という,しばしば矛盾する2つの要求を高いレベルで満たそうとする流れでもある。
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.