特集 EBM確立に向けての治療ガイド
緑内障
はじめに—緑内障治療におけるEBM
根木 昭
1
1神戸大学医学部眼科学教室
pp.242-243
発行日 2001年9月28日
Published Date 2001/9/28
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410907519
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EBMは患者本位の医療を目指すために導入された一種の意識改革的医療である。従来,医療人が最も信頼を置いてきた基礎的研究の成果や経験的知識に基づく治療が単に理論的なものではなく,本当に患者のQOLの改善につながったかを問いただし,再現性や信頼性の高い,有用性の証明された治療のみを選択していこうというものである。基礎医学上の大きな業績から誘導された治療法が必ずしも臨床的に有益な効果をもたらすものではないし,長年の個人的な経験や直感が治療を誤った方向に導くことも稀ではない。患者が実際に有用であったと実感できる治療効果のみを選択し,不確実な治療を医師の裁量のみで施行せず,患者への負担,不利益を極力なくそうとすることは医療者サイドからの医療から,患者サイドの医療へ転換する上で必要な考えである。
緑内障治療をこのEBMという視点から見ると誠に厳しい状況にある。疾患の性質上,自覚症状に乏しく,治療により患者にとって自覚できる改善効果がないこと,効果の判定が年単位の長期にわたるなどのため,治療に際してはどうしても医療人サイドのパターナリズム的傾向がでるからである。エビデンスを集めるにしても比較の基準となる無治療群を年余にわたって観察することは現代では倫理的に許されないこともある。
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