コラム
緑内障手術の選択
永田 誠
1
1永田眼科
pp.214
発行日 1996年10月20日
Published Date 1996/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410905139
- 有料閲覧
- 文献概要
私が緑内障と深くかかわるようになったのは41歳のとき,大学の眼科教室を離れ,臨床の第一線で多数の患者を診察するようになり,各種の緑内障の病態を毎日のように見て,その治療に頭を悩ますような環境に置かれてからといってよい。それまでの大学病院でももちろん緑内障の患者はかなり多数診察をし,手術もしていたが,今振り返ってみるとその理解は通り一遍のもので,隅角鏡所見の読み一つをとってみてもはなはだ浅薄であったと反省せざるをえない。Becker-Shafferの有名なText bookの初版が出版されたのが,昭和35年,ChandlerとGrantの“Lectures onGlaucoma”の初版が昭和40年に出て,近代的な緑内障の考え方が徐々にわが国にも浸透しつつあったが,テキストブックでの理解と臨床経験とが結びついて緑内障への傾倒が起こり始めたのは,古典的緑内障術式を行って数々の失敗を重ね,その矛盾と限界を痛感するようになった昭和45年頃からであったと思う。その頃ようやく自分のものとなったマイクロサージェリーの技術を緑内障手術に生かすべく,昭和46年にヨーロッパ各地のクリニックを訪ねて,当時改良されたトラベクロトミーの実際を研修した。最も親しく教えを受けたのは当時ハンブルク大学の先任講師であったProf.Naumannとチュービンゲン大学のProf.Harmsからである。
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.