Japanese
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連載 眼の組織・病理アトラス・154
ベーチェット病と水晶体起因性眼内炎
Behcet's disease and lens:induced endophthalmitis
猪俣 孟
1
Hajime Inomata
1
1九州大学医学部眼科学教室
pp.1526-1527
発行日 1999年8月15日
Published Date 1999/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410906483
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ベーチェット病では,繰り返す眼発作によって水晶体が損傷され,水晶体起因性眼内炎を合併することがある。その発症機序に次の2つが考えられる。第一の機序は,前眼部の著しい炎症発作またはその繰り返しによって水晶体嚢が破嚢し,水晶体嚢下および実質内に多形核白血球やマクロファージが浸潤する(図1)。活性化されたマクロファージは類上皮細胞または多核巨細胞になって,水晶体周囲に集積する。これが水晶体起因性眼内炎である。第二の機序は,鋸状縁炎pars planitisによって鋸状縁から硝子体内に広がる毛様体炎膜cyclitic membraneが形成されて,これが毛様体扁平部から毛様体ひだ部へと広がり,水晶体の全周囲を取り囲むようになる(図2)。毛様体炎膜に取り囲まれた水晶体の嚢はやがて破綻する。その結果,類上皮細胞や多核巨細胞などが水晶体周囲に集積する。上記2つの異なった機序による水晶体起因性眼内炎の病理組織学的鑑別点は,以下のとおりである。
第一の機序では,毛様体炎膜の形成が乏しい(図1)。たとえ形成されていても水晶体周囲に及んでいない。さらに,多形核白血球の浸潤が著しい(図3)。他方第二の機序では,毛様体炎膜が水晶体周囲を完全に囲繞している(図4)。水晶体は数か所で破嚢している。水晶体周囲の細胞浸潤は多形核白血球よりリンパ球が目立つ。いずれの場合でも,最終的には水晶体周囲に類上皮細胞や多核巨細胞が浸潤して,肉芽腫性炎症の病像を示す(図5)。臨床的に両者のどちらかであるかを判定することは不可能であるし,またその必要はない。要は,このような症例では水晶体摘出の時期を失しないように対処することである。
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