Japanese
English
連載 眼の組織・病理アトラス・151
スタージ・ウエーバー症候群
Sturge-Weber syndrome
田原 昭彦
1
,
猪俣 孟
2
Akihiko Tawara
1
,
Hajime Inomata
2
1産業医科大学眼科学教室
2九州大学医学部眼科学教室
pp.802-803
発行日 1999年5月15日
Published Date 1999/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410906334
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スタージ・ウエーバー症候群Sturge-Weber syndromeは,母斑症phakomatosisの一種で,皮膚,眼,髄膜に発症する血管腫を特徴とする過誤腫hamartomaである。皮膚病変は三叉神経の支配領域に出現するポートワイン様の血管腫port-wine stain (nevus flammeus)で(図1),通常,片側性で,眼瞼,眼窩,頭皮にも広がる。顔面の血管腫と同側の髄膜血管腫や頭蓋内石灰化を伴うことがある。同側の眼球にも,脈絡膜血管腫,上強膜血管腫,網膜血管の怒張蛇行がみられることが多い。スタージ・ウエーバー症候群に合併する脈絡膜血管腫はびまん型で,眼底検査でオレンジ色の腫瘤としてみられる。しばしば漿液性の網膜剥離を伴う。血管腫と同側に緑内障を発症する。緑内障発症眼では,隅角検査で,隅角発育異常がみられることが多い(図2)。緑内障の発症機序として,隅角の発育異常によるとする説,上強膜血管腫の存在による上強膜静脈圧の上昇によるとの説がある。薬物療法のみで眼圧をコントロールすることは難しく,トラベクレクトミーやトラベクロトミーなどの手術を要する。
病理組織学的に,脈絡膜血管腫は内皮細胞で境されて拡張した多数の血管からなる(図3)。腫瘍の境界部では,腫瘍の血管と脈絡膜固有の血管とが混じって存在して,びまん型血管腫の所見を示す。脈絡膜血管腫の部では,網膜色素上皮の過形成がみられる。また網膜色素上皮の血液—網膜関門が破綻して網膜下液が貯留し,網膜剥離を生じる(図2)。さらに,網膜外層,場合によっては内層に及ぶ網膜変性が存在する。上強膜の血管腫も拡張した多数の血管で構成される(図4)。
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