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私が眼科医としてスタートを切ったのは昭和34(1959)年であった。当時の熊本大眼科の教授は須田経宇先生で,緑内障を専門としておられ,すでに昭和27年に日眼総会において「緑内障の早期診断について」という演題で宿題報告をされていた。当時は前・後房の内圧のみならず硝子体に眼を向けられ,その内圧,さらに物性にまで研究の範囲が広げられていた。私は大学院生として硝子体の粘弾性について研究し,昭和38年の日眼総会にて発表したが,2年後の総会が熊本開催と決まり,それとは全く別に須田先生が特別講演をも担当されることになったので,その準備を手伝った。まずSugerの成書を片手に教室で得られる成績についての項目を検討し,それぞれに仕事の分担や調整を行った。これが後に私の緑内障学への傾倒の始まりであり,知識の地盤にもなったことは言うまでもない。昭和40年に,総会も特別講演も無事終わり,その後は口本眼科全書の緑内障の診断と治療の執筆をお手伝いした。
以上が緑内障抜きでは語れないわが眼科医生活の前半の歩みであるが,もう一つの出来事が昭和36年に起こった。日本臨床眼科学会におけるグループディスカッション(現在の専門別研究会)の創設である。研究題目は参加希望者の多いものから8つ選ばれたのであるが,当然のことながら緑内障はそれに選ばれ,須田先生が初めから世話役をされた。当初は年2回のこともあったが,後には年1回となり,平成元(1989)年まで続き,翌年の第1回日本緑内障学会の開催に連なった。このグループディスカッションについては私が4年前に還暦記念に「緑内障の進歩」と題して記録をまとめた。まだ少し残っているので,ご希望の方はご一報願いたい。
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