特集 緑内障Today
Ⅱ 確定診断を得るために
トノグラフィーの限界
岩崎 直樹
1
Naoki Iwasaki
1
1大阪大学医学部眼科学教室
pp.44-45
発行日 1996年10月20日
Published Date 1996/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410905085
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はじめに
今世紀初頭Schiφtzは,反復して圧入眼圧計で眼圧を測定すると眼圧は低下し,その割合は緑内障患者で少ないことを報告した。これを応用して房水流出量を測定しようとする試みが行われ,1950年にGrantら1)が今日のトノグラフィーの基礎的考え方を確立した。その後精力的に研究が行われ,房水流出率(C値)に関するさまざまな問題点も明らかとなってきた。
現在ではトノグラフィーは房水の動態を研究する最も基本的な方法として確立しており,近年のさまざまな研究,たとえばPGF2αの房水動態に与える影響や,laser trabeculoplastyの効果判定などにも使用されている。しかし,実際の臨床の場で用いられることは徐々に減少しており,当科でも研究目的以外でトノグラフィーを行うことは最近5年間ではほとんど皆無であった。Shields2)の“Textbook of Glaucoma”にも,“(Tonography's) clinical usefulness in the detection and man—agement of glaucoma remains a matter ofcontroversy.”と述べられており,今回のテーマであるcontroversyの語が見える。このように,臨床の場で用いられることが少なくなった原因として以上のような要素が挙げられている。
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