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骨髄性白血病の初発症状として,末梢血や骨髄にはまだ異常がみられない時期から眼窩や眼瞼に骨髄幹細胞や未熟顆粒球からなる白血病細胞が浸潤して,眼球突出や眼瞼の腫脹がみられることがある。これを顆粒球性肉腫granulocytic sarcomaと呼ぶ。腫瘤の割面が緑色を帯びてみえることから緑色腫chloromaともいう。緑色腫は,白血病細胞内に含まれるプロトポルフィリンの代謝産物やミエロペルオキシダーゼmyeloperoxidase (別名:verdoperoxidase)の分解産物のためである。眼球周囲は白血病細胞浸潤の好発部位で(図1),眼球突出は10歳前後の小児白血病の重要な臨床所見のひとつである。眼症状が出現してから数か月ないし1年以内に血液像に白血病としての異常が発見されることが多い。血液像に異常が認められない時期では,眼窩悪性リンパ腫や平滑筋肉腫との鑑別が必要である。
顆粒球性肉腫(緑色腫)の病理組織所見として,腫瘍は分化度が著しく低い骨髄幹細胞や未熟顆粒球によって構成されている。腫瘍細胞は円形で大型の核を有し,核の辺縁がクロマチンに富む。核小体は明瞭で,細胞分裂も高頻度に認められる(図2)。細胞質は核に比較して乏しく,細胞内の顆粒も小さくて少ない。分化がすすむにつれて,細胞質内に多数の顆粒が存在するようになる。これらは好酸性または好塩基性顆粒で,顆粒内にはライソゾーム酵素が含まれている。腫瘍細胞の細胞質にはアゾ色素が存在する。Naphthol AS-D chlor-oacetate esteraseを用いたLeder染色で,細胞質のエステラーゼ活性を証明すれ,ば,腫瘍細胞は未熟顆粒球から成る顆粒球性肉腫であると診断できる(図3)。電子顕微鏡で観察すると,腫瘍細胞内の顆粒は限界膜に包まれ,電子密度の高いものとやや低いものがある(図4)。
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