特集 高齢患者の眼科手術
高齢患者への麻酔
局所麻酔
春田 恭照
1
Yasuteru Haruta
1
1愛媛大学医学部眼科学教室
pp.66-68
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410904025
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高齢者のみならず,眼科手術では,全身麻酔の必要な幼・小児などを除いて,通常は局所麻酔が選択される。その目的は,意識を覚醒させたまま,知覚を司る三叉神経を麻痺させ,かつ眼輪筋を支配する顔面神経を麻痺させて瞬目を抑制すること,外眼筋を支配する動眼・滑車・外転神経を麻痺させて眼球運動を抑制することである。
眼科手術では,ドレーピングにより顔面全体を覆うために,術中の患者の全身状態の把握が困難である。術中に患者の状態が急変して手術を中止し,あわててドレープを剥がし,救急処置を行ったという苦い経験を持つ先生方も少なくないと思う。もちろん,心電図や血圧のモニタリングは行うが,その他の状況は不明なことが多く,患者からの応答や体動で判断するしかなく,意識の覚醒を得ていることが,術者および患者にとって術中の不安感を除くために重要となる。よって,術中に患者とのコミュニケーションを残しながら,無痛(アナルゲジー)と無動(アキネジー)を得ることができる局所麻酔は,手術を安全に施行するために不可欠な要素である。
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