特集 高齢患者の眼科手術
高齢者の眼
高齢者の眼
安達 惠美子
1
Emiko Adachi
1
1千葉大学医学部眼科学教室
pp.14-18
発行日 1994年10月30日
Published Date 1994/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410904010
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眼科が対象とする手術患者の年齢は他科に比べると圧倒的に高齢者が多い。したがって,中央手術場システムをとっているところでは,全身管理に特別の配慮が麻酔医によってなされる。しかし,眼そのものについての管理はわれわれ眼科医の責任である。加齢に伴う眼の変化については術者は経験的にそれを知っており,最善の方法で対処している。著者も術直前に被手術眼を眼前におきながら,年齢を再確認する。例えば,白内障の手術を例にとってみよう。年齢によって,水晶体嚢の弾性力も見かけ上ではわからない軟強度があるし,核の大きさ,チン小帯の強さも異なるから,手術の際,手法のノウハウも少し変法させる。すべての術者は経験的に高齢者の生理学的状態(biolog—ical status)を知ってはいるが,基礎的には文献を読んでいるとも思えない。もっとも,その知識はほとんど正しいのであるが。
生理学的加齢現象に加えて,その脆弱性に基づいた病的変化が高齢者には生じる。つまり,高齢者にみられる眼疾患である。老人白内障,黄斑変性などに代表されるものである。これらを各論的に記述するわけにもいかないので,ここでは表1に高齢者の眼球各組織の特徴をまとめ,以下に高齢者の視機能が若年者とは明らかに異なる代表的な症状について述べてみる。
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