特集 小児眼科診療マニュアル—私はこうしている
診療の実際—ポイントとコツ
硝子体疾患
東 範行
1
1国立小児病院眼科
pp.1611-1615
発行日 1990年9月30日
Published Date 1990/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900391
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小児期にみられる硝子体疾患は,併せて網膜,視神経や水晶体,ひいては眼球全体の異常を伴っているものがしばしば見られる。多くは先天異常であるが,他に未熟児網膜症のように組織の未熟性と出生前後の環境変化によるものがある。このうち第一次硝子体過形成遺残(PHPV)と家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)は過去に疾患概念として確立されたものであるが,症例が集積され,病像に関する知識や発生機転についての考察が深まるにつれて,その名称が適切ではないと考えられてきている。また疾患概念が混乱しているのみならず,PHPVとFEVR,瘢痕期未熟児網膜症はその病像が類似しており,診断に迷う症例も多い。これは発生機転の一部が共通していることも考えられるが,発達期のかなり広い時期にわたって網膜や硝子体の血管異常が生じれば,異なる原因によっても,非特異的に網膜襞や水晶体後部線維組織などの類似の病像を呈しやすいことにも起因している。
これらの診断には眼底検査や超音波検査,CTスキャン検査,電気生理学的検査などとともに,現病歴,既往歴,家族歴などの問診も大切なポイントである。治療できるものはわずかであるが,弱視予防のために行われるものがあり,また晩期合併症への対策も重要である。
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