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高速画像処理や大規模データベース,AIなどの進歩により近年,生体認証システムがどんどん一般化してきています。スマホやパソコンなどではログインに指紋認証や顔認証を利用することが当たり前のようになっており,多くの製品に搭載されてきています。またインドでは虹彩認証,顔認証,指紋認証を含む生体認証IDが普及し,本人認証,キャッシュレス決済,補助金給付などにも使われているそうですし,その他,虹彩認証はシンガポールではパスポートに,中国でもキャッシュレス決済などに広く利用されているとのことです。さらに網膜血管走行認識による生体認証も非常に精度が高いとされ研究が続けられています。眼科関係者として角膜外傷が起きたり網膜中心静脈分枝閉塞症が起きたらどうすると素朴な疑問を抱くこともありますが,アベンジャーズのフューリー長官のように網膜認証が不可なら虹彩認証,それも駄目なら自動的に前眼部認証に即座に変化させて対応することも技術的には容易でしょう。
これらのさまざまな生体認証システムの内,特に顔認証が,その画像取得の容易性から利用される場面が多くなってきています。中国では顔認証カメラが普及し,国家レベルはもちろん,民間レベルでもかなりの範囲で顧客管理として実際に使われているようですし,日本でも警察が利用を始めています。昨今の新型コロナウイルス禍によるマスク普及により,また状況は変化するとは思いますが,さらに一般化していく可能性は高いでしょう。一方で,これらの生体認証システム利用による個人情報保護に関する関心も高まっており,米国ではニューヨーク州,マサチューセッツ州など多くの州で規制する動きが出ています。眞鍋洋一先生による「診察券いらずの顔認証カメラシステム」論文は眼科外来診療への市販されている顔認証カメラの応用の報告であり,手軽に入手できる民生品による顔認証の認識率が100%であったと報告されています。これがよいことであるのか,憂慮すべきことであるのかに関しては議論があるとは思いますが,技術の進歩とその普及は驚くべき速度で進行しており,われわれも常にそれをfollowしていかなければいけないことが実感されます。
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