Book Review
蛍光眼底造影ケーススタディ—エキスパートはFA・IA・OCTAをこう読み解く
辻川 明孝
1
1京大大学院・眼科学
pp.438
発行日 2020年4月15日
Published Date 2020/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410213525
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
欧米では蛍光眼底造影写真だけを見て,その所見をこと細かに読んでいく「読影」という作業が古くから行われてきました。得られた所見を元に鑑別診断を挙げ,診断を行い,治療法を決めていくわけです。日本では,加齢黄斑変性が急増した時期とインドシアニングリーン蛍光眼底造影・光干渉断層計(OCT)が普及した時期とが重なったため,昨今,重視されているmultimodal imagingが早い段階から行われてきました。そのため,得られた検査画像をトータルで判断することが行われがちであり,個々の画像をじっくり「読影」する文化が根付いてきませんでした。評者もフルオレセイン蛍光眼底造影画像を見ている最中に,OCTの画像でカンニングするということをつい行ってしまいます。
蛍光眼底造影は網膜疾患診療の基本ですが,「読影」のスキルアップはなかなか難しいといえます。その理由に造影検査画像には典型例が少なく,多くの所見の集合体であることをまず挙げることができるでしょう。さらに,造影開始から画像は刻々と変化するため,所見を得るためには見るべき画像を選び,その変化も考慮する必要があります。また,近年急速に普及しているOCT angiographyには特有のアーチファクトがあります。「読影」スキルアップのための最初のステップはエキスパートの「読影」を聞いて,それぞれの所見の読み方,着目するべき箇所を理解することです。その上で,自分で行った「読影」をエキスパートの前で披露し,批評してもらうことでステップアップが望めますが,そのような恵まれた環境にいる人ばかりではありません。
Copyright © 2020, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.