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はじめに
流涙症にアプローチする際,最も重要なことは,流涙症が症状ではなく疾患であることを理解することです。眼脂に悩む慢性涙囊炎の患者に日々涙洗を行うのは,一時的に症状を改善することにはなっても,疾患に対する根治的治療とはなりません。
外来で,長期間涙洗をされている患者さんが来院することがあります。治療のムンテラを行い,長年治ることはないと言われ続けていたのが,治癒することを想定され,感極まって涙を流した(涙道閉塞だからではなく)ケースが多数あります。白内障や緑内障,網膜硝子体疾患では経験したことがありません…。
などと,エラそうに述べてきましたが,かくいう筆者も流涙症に携わる前は,そのような症例を多数生み出してきております。
流涙症に苦手意識があるとすれば,日常診療で時間がないなか,多種多様で,全く異なる病態(例えばドライアイと涙道閉塞)が混在する複雑な疾患と捉えるからではないでしょうか? たいていの場合は,涙を止めるためには,どの点眼薬が良いだろうかと最初から治療を意識してしまい,診断を順序立てていない場合が多いのではないでしょうか。例えば涙道疾患を得意とする先生※1の場合,「この症例は涙道閉塞だ!」と決めつけて,いきなり侵襲的な通水検査を行ってしまい,
先生「ほら,流れてないでしょう!?」
患者「いえ,しょっぱい味がしますけど?」
先生「…いや,それ鼻水でしょ!」
などとわけのわからない状態となり,それ以降の検査,例えばTMH(tear meniscus height:涙液メニスカス高)測定,BUT(tear film break-up time:涙液層破綻時間),Schirmerテストなどができなくなり,診断不能な状態に陥ってしまうかもしれません(※1:筆者のこと)。
この稿では,「流涙診療事始め」として,難しい話は成書に譲り,あくまで臨床に即した短時間でできる診断アプローチを4つの段階に分けて述べたいと思います。
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