書評
神経眼科学を学ぶ人のために
若倉 雅登
1
1井上眼科病院
pp.373
発行日 2015年3月15日
Published Date 2015/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410211262
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日本広しといえども,神経眼科の大看板を掲げた主任教授のいる教室は,現在兵庫医科大学しかない。その人,三村治教授が八年をかけて渾身の神経眼科学の教科書を上梓した。
視覚は眼球だけでは成り立たない。対象物に視線を合わせて明視するという瞬時の作業は脳と眼球の共働で行われ,このときに,眼球運動,調節や瞳孔の運動が生じている。こうして適切に網膜に入力された視覚信号は視路を経て,大脳皮質視覚領に到達し,さらに高次脳へ至って情報処理される。神経眼科とは眼球そのものだけでなく,それと共働作業をしている大脳皮質や脳幹,小脳も含めた視圏で,視覚に関する生理,病理を捉える学問で,その源は20世紀前半にある。その後の一世紀の間に,神経学を支える学問群の目覚ましい進歩とともに,神経眼科はおびただしい臨床経験をした。三村教授は,日本の神経眼科学の草創期メンバーである井街譲,下奥仁兵庫医大両教授の下に学び,1998年に第3代教授に就任した。この経歴からも,日本で最も豊富な神経眼科の臨床経験を有した現役医師かつ教育者であることが知れる。
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