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特集2 硝子体手術の功罪
網膜剝離に対する硝子体手術
Vitreous surgery for rhegmatogenous retinal detachment
竹内 忍
1
Shinobu Takeuchi
1
1竹内眼科クリニック
pp.54-59
発行日 2015年1月15日
Published Date 2015/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410211192
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はじめに
裂孔原性網膜剝離(rhegmatogenous retinal detachment:RRD)の治療に対しては硝子体手術の導入により,難治性剝離の治療成績は向上した。しかしながら,硝子体手術導入以前でも,強膜バックリング手術と空気またはガス注入の併用で網膜復位率は95%以上ではあった。例えば上方の格子状変性辺縁の大きな裂孔による胞状網膜剝離であっても,手術経験豊富な術者であれば,復位可能であったし,黄斑円孔や巨大裂孔例も黄斑バックルや適切なガス注入で対応できた。しかしながら,経験の浅い術者にとってはきわめて難しい症例であり,復位するか否かは術者の技量によるところが大きかった。
これに対し,硝子体手術は手技的にも容易であり,経験の浅い術者でも高い復位率を得ることができた。そのため,時の経過とともにすべての裂孔原性網膜剝離症例を硝子体手術で治療しようとする傾向がみられるようになっている。その結果,強膜バックリング手術を行う機会が減少するとともに,どのような症例が強膜バックリング手術に適しているかという理解が薄れている。一部の術者は硝子体手術に際しても,強膜バックリングを併用しないことが優れた術式であるかのごとく,初回手術が不成功に終わるとシリコーンオイルタンポナーデを行い,一時的な手術材料であるはずのシリコーンオイルを抜去しないままでいる。
本稿では,裂孔原性網膜剝離治療の歴史を振り返りながら患者の立場からみた術式の選択を行い,裂孔原性網膜剝離に対する硝子体手術の有用性と問題点を検討する。
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