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はじめに
黄斑浮腫とは,文字通り網膜の黄斑部に浮腫が引き起こされた状態であり,黄斑部という組織に水分が貯留する病態の総称であって,病因は特定されていない。硝子体手術を含め,いわゆる介入治療を行う場合は,疾患の発症メカニズムのどこかに焦点をあてて行われるべきであり,そのためには黄斑浮腫の発症メカニズムを理解しなくてはならない。
さて,黄斑浮腫が起こる原因は単純に考えれば3つある(図1)1)。
①水分の供給過剰:黄斑部に過剰の水分が流入してしまう場合である。水分の供給先は血管であり,考えられるのは網膜血管と脈絡膜血管しかない。網膜血管で起こりうるのは血液網膜柵の破綻か異常血管の発症である。前者は糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞に代表される血管壁の機能的破綻による血管透過性の亢進であり,後者は糖尿病網膜症の新生血管や黄斑部毛細血管拡張症の微小血管瘤に代表される血管の器質的変化である。また,脈絡膜血管で起こりうるのも血液網膜柵の破綻か異常血管の発症であり,前者は中心性網脈絡膜症に代表される網膜色素上皮(retinal pigment epithelium:RPE)の機能的異常による漿液性剝離であり,後者は加齢黄斑変性に代表される脈絡膜新生血管からの異常漏出である。
②水分の排出抑制:黄斑部での水分のクリアランスが低下して,水分の排出が抑制されてしまう場合である。輪状網膜症やCoats病のように血漿蛋白が網膜組織間隙に沈着すると,組織の膠質浸透圧が上昇してしまい,水分が貯留してしまう場合や,変性疾患のように細胞膜のポンプ機能が低下して細胞内に水分が貯留してしまう場合がある。
③器械的伸展:黄斑部そのものが物理的に伸展されている場合である。硝子体黄斑界面症候群のように黄斑部が垂直方向に牽引されて物理的な間隙が生じ,そこに水分が貯留してしまう。
さらにはぶどう膜炎のように,黄斑部が炎症を起こすことで,炎症の特徴でもある組織浮腫が黄斑部に生じることもある。
このように黄斑浮腫の発症メカニズムは,多岐にわたり,また,時に複雑に絡み合っていることが多いため,特定の介入治療が存在するわけではなく,保存的治療として血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)阻害薬や抗炎症ステロイドの局所投与,侵襲的治療として,網膜光凝固と硝子体手術が臨床で用いられている。
本稿では黄斑浮腫に対する硝子体手術について述べてみたい。
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